生活の中でお茶を飲む機会は多いのでは。紅茶派、緑茶派など、人それぞれお茶の好みもあるはずです。
ところでお茶にはたくさんの種類がありますが、どうやって分類されているかご存じですか?
ここでは紅茶と緑茶に焦点をあて、成分や製法の違いを見比べてみましょう。あわせてそれぞれの歴史も解説します。
紅茶も緑茶も原料は同じ
結論からいうと、紅茶も緑茶も同じお茶の葉からできています。茶葉の色や香り、淹れたお茶の味わいまですべて違うように感じるため、驚かれる方も多いのではないでしょうか。
それではなぜ紅茶と緑茶はまったく違うお茶のように見えるのでしょうか。理由は、茶葉の製造方法に違いにあります。
紅茶と緑茶の違いは茶葉の発酵の有無
紅茶はお茶の葉を発酵させてつくり、緑茶は発酵させずにつくります。これが紅茶と緑茶の大きな違いです。
なお、発酵というと納豆やチーズなど菌を使って製造する食品が思い浮かびますが、紅茶の製造には菌を使いません。
お茶の世界でいう発酵とは、酸化のこと。お茶の葉を摘み、そのまま干しておくと酸化が進むのですが、この現象を発酵と呼んでいるのです。
茶葉の発酵度合いで変わる5つのお茶の種類
お茶にはほかにもいろいろな種類がありますが、これらは茶葉の発酵度合いによって分類されています。
以下の表では、茶葉の発酵度合いと、各段階でできるお茶の分類をまとめました。
発酵度合い | お茶の分類 |
不発酵 | 緑茶 |
弱発酵 | 黄茶、白茶 |
半発酵 | 青茶 |
完全発酵 | 紅茶 |
後発酵 | 黒茶 |
日本人にとって馴染みのある煎茶や玉露、番茶などはすべて緑茶に分類されます。黄茶、白茶は中国で飲まれているお茶で、青茶は俗にいうウーロン茶、そして黒茶はプーアル茶です。
発酵度合いで味がどれだけの違いが出るのか、ぜひ飲み比べてみたいものですね。
製法の手順で見る紅茶と緑茶の違い
続いては紅茶と緑茶の製造方法をそれぞれ紹介します。発酵の有無でどれだけ工程が変わるか、見比べてみてくださいね。
紅茶の製法
紅茶の製法はいくつかありますが、今回は伝統的な「オーソドックス製法」の手順をまとめました。
01. 萎凋(いちょう)
摘み取った茶葉を平らに広げ、陰干しします。
02. 揉捻(じゅうねん)
茶葉をねじり、組織を壊すことで葉の中に含まれる酸化酵素を揉み出し、発酵を進める工程です。
03. 玉解き、ふるい分け
2の工程でひと塊になった茶葉をほどき、空気に触れさせながら引き続き発酵させます。茶葉をふるいにかけ、ふるいの下に落ちた茶葉は次の工程へ。ふるいに残った茶葉はもう一度2の工程へ戻ります。
04. 発酵
温度25~26℃、湿度90%に保たれた発酵室でさらに発酵させる工程です。
05. 乾燥
発酵を止めるため、茶葉に熱風をかけて乾燥させます。茶葉を広げ、熱が取れたら完成です。
緑茶の製法
続いては緑茶の製造方法を解説します。発酵の工程がないぶん紅茶より工程が少ないように思われますが、お茶ができるまではいくつもの工程を重ねる必要があるのです。
01. 蒸熱(じょうねつ)
摘み取った茶葉を高温の蒸気で蒸します。加熱により、茶葉の酸化を止めるための工程です。
02. 粗揉(そじゅう)
茶葉に熱風をかけながら揉み、余分な水分を飛ばします。
03. 揉捻
粗揉では取り除けない、葉脈や茎に残っている水分を揉み出す工程です。強い力で揉みながら茶葉の組織を壊し、お茶を淹れたときに成分が出やすくなるようにします。
04. 中揉(ちゅうじゅう)
3の工程でひと塊になった茶葉をほぐす工程です。
05. 精揉(せいじゅう)
生地を伸ばすような動作で茶葉を一定方向に揉み、細長く成形していきます。この段階で、私たちがよく見慣れているお茶っ葉の形になるのです。
06. 乾燥
仕上げの乾燥です。しっかり水分を抜くことで、長期保存が可能になります。
紅茶と緑茶の成分の違いは?
もとは同じお茶の葉からできているとはいえ、製法が違うと成分も変わりそうですよね。続いては、紅茶と緑茶の成分を見比べてみましょう。
紅茶と緑茶に共通して含まれる成分と効果
まずは紅茶にも緑茶にも含まれる共通の成分と、その効果をまとめました。
カフェイン
集中力アップや、疲労回復に効果があるといわれる成分です。利尿作用もあるとされ、むくみ解消にも役立つとされます。
サポニン
お茶の渋みのもとになっている成分です。抗菌作用、抗ウイルス作用があるとされ、免疫力アップに効果的です。
ミネラル類
骨や歯のもとになるカルシウムや、皮膚や骨の代謝に関わるマンガン、血圧を一定に保つために必要なカリウムなど、さまざまなミネラル類が含まれています。
紅茶と緑茶で違いが見られる成分は?
続いては、紅茶と緑茶で異なる成分を比較してみましょう。
カテキン
カテキンはさまざまなお茶に含まれる成分です。非常に酸化しやすい特徴があり、発酵が伴う製法でつくられるお茶では、成分や効果に変化が生じます。
まず、紅茶のカテキンは発酵を経て「テアフラビン」に変化します。強い抗酸化作用や抗ウイルス作用を持つとされ、健康づくりや美容づくり、風邪予防などさまざまな効果が期待できる成分です。
カテキンの種類のうち、緑茶にのみ含まれる成分は「エピガロカテキンガレート」と呼ばれます。
悪玉コレステロールの抑制や脂肪燃焼に役立つとされ、生活習慣病の予防やダイエットなどへの効果が期待されている成分です。
ビタミン類
美肌効果や免疫力アップに効果があるとされるビタミンCは、緑茶に豊富に含まれます。実は紅茶にはビタミンCは含まれておらず、ビタミンAやビタミンB群などが含まれています。
フッ素
虫歯予防に役立つとされる成分です。歯の表面を強くし、虫歯の原因菌菌を弱める効果があるといわれています。含有量は緑茶よりも紅茶の方が多いとされています。
まとめ
普段何気なく飲んでいる紅茶や緑茶ですが、製法や歴史を深掘りしてみると、そうなんだ!と感じることも多かったのではないでしょうか。
お茶は種類によって味や香りが大きく異なり、さまざまなシーンで私たちを楽しませてくれる奥深いものです。いろいろな紅茶や緑茶を飲み比べながら、ぜひお気に入りの1杯を見つけてみてくださいね。