TEA
260余年続く、京はやしやのお茶へのこだわりについてご紹介。
茶葉の生育から加工まで、お茶づくりの全ての工程で、茶本来の味わいを楽しめるような工夫を施しています。
京はやしやの抹茶、玉露は全て宇治品種のみで作られています。
宇治品種とは、宇治在来より選抜された品種のことをいい、さみどり、あさひ、うじひかり、ごこう、駒影、ほうしゅん、宇治みどり、てんみょう、京研などがあります。
ちなみに、京都で栽培されている静岡品種はやぶきた、おくみどり、さえみどりなどです。
玉露、碾茶は全て宇治品種、煎茶はやぶきた品種となります。
京はやしやの煎茶は、煎茶本来の味わいを追求するため、栽培からこだわりました。
煎茶に適したやぶきた品種の栽培方法は、茶園農家さんによって異なります。現在、宇治煎茶でも主流になっているのは、茶に覆いをする栽培方法。
茶を被覆すると、葉緑体が増え、お茶の水色(すいしょく)が緑色になり、渋みのない甘ったるい味になります。この状態は、煎茶本来の味わいが失われているのです。
煎茶は、水色は金色透明で、渋みと旨味のバランスを楽しむお茶であるべきです。
みなさんが煎茶本来の味わいを楽しめるよう、あえて茶に覆いはせず、露地栽培にこだわっています。
お茶は飲み物なので、本来は香味(内質)が一番大切。
ところが、昔から茶の取引の中では、香味よりも形と色が重視されてきました。
なぜなら、見た目(視覚)はだれでも解りやすく、鼻と口(嗅覚と味覚)は判りにくく、人それぞれに違うから。
そのため、細くて真直ぐと見た目は綺麗だけれども美味しくないお茶や、水色が緑で濁ったお茶が作り続けられています。
京はやしやでは、お茶(煎茶、玉露)は見て楽しむものではなく、飲んで楽しむものとし、本来の煎茶や玉露の、味や香りを再現するための製法に徹底的にこだわっています。
お茶の葉は、本来、曲がっていて不恰好なものでした。それが美味しいお茶だったのです。
しかし、徐々に海外への輸出が増える中で、味よりも見た目が重視されるようになりました。
ピンと真っ直ぐで、細長い。それこそが日本らしいお茶だ、と海外の輸入業者が注文をつけるようになりました。特に主な輸出先だったアメリカは、お茶に砂糖とミルクを加えるのが主流だったため、味はあまり重視されなかったのです。
こうして、見た目が日本らしく、砂糖やミルクを加えやすい苦くて渋いお茶が、海外に売れるお茶として認識されるようになり、やがて今の一般的なお茶の製法として浸透しました。
しかし、見た目重視の苦くて渋いお茶は、本来のお茶の味ではありません。
京はやしやでは、改めてお茶本来の味を皆さまに味わっていただくため、輸出が盛んになる前のお茶の製造手法を再現すべく挑戦しました。
茶葉を細く真直ぐに形つくる作業は、通常かける力よりもかなり緩く、短くしています。これは、江戸時代、煎茶の祖である永谷 宗円が生み出した、揉切製法に近いものがあります。
この製法によって、内質(香味)を重視した茶ができ、かつて人々に親しまれていたお茶本来の味を再現できるようになりました。
現在市販されているお茶の水色は、ほとんどが緑で濁っています。
緑茶だから、緑茶の水色は緑が普通と思っている人が多いようです。
しかし、その緑は造られた色です。本来の煎茶の水色は、茶が持っているフラボン色素により黄色くなります。ペットボトルを底から見れば、黄色か赤黄色です。緑の水色を造るため、茶園に黒いネット(寒冷紗)をかけて茶葉の葉緑素を増やしています。そのために煎茶の香気は薄れます。
茶葉を蒸す時に攪拌を強くして茶葉を細切れに切断し、葉緑素が茶液の中に多量に浮遊するように蒸します。その葉緑素が壊れないように低温で製茶します。これによって、緑の液体を得ることができますが、本来の茶の香りはありません。
この荒茶を問屋でマイクロ、遠赤、ドラムで火香を付けたのが、今の多くの茶です。
京はやしやの煎茶は、金色透明。
お茶本来の味や香りを楽しめます。内質を追求したため、茶葉は太っており、他のお茶屋さんのお茶とも見た目が異なります。
なかには、想像しているお茶と味が違うことに驚く方もいらっしゃるでしょう。全ての人を満足させることは難しいかもしれません。ですが、1人でも多く、お茶本来の味を味わっていただけるよう、尽力していきます。